役割等級制度の現状と本質 [8/11]
職能資格制度の問題点
BG: 年功序列が出てきたところで,職能資格制度について先生のお考えをお聞きしたいのですが。
西村: これからの低成長・成熟化の社会において,能力を重視した形でどんどん昇格していくような,そういった職能資格制度というものはほとんどなくなっていくのではないでしょうか。ただ,職能資格制度そのものを否定するつもりはありません。これからの時代に合っているか合っていないかというところでの判断でしか,それを言うつもりはありません。
例えば,今まで構築されてきた職能資格制度というのは,「能力は低下しない」「能力は伸び続けるんだ」ということを前提に制度設計されていましたから,年齢が上がるごとに給与も上がっていく。また,画一的な制度運用がなされるものですので,ある年齢に到達すると,その年齢,同期を見比べて,自動的に上がっていくというような状況もあります。
現在,「ポスト不足」という時代を迎えています。私がある会社に行ったときに,社員500人の会社にもかかわらず,200人の課長がいる。課長の中にどんな課長がいるのかというと,正課長はもちろん,課長補佐,課長代理,課長待遇,それから部長付。これらの肩書きを会社から与えられて,何をしているのかわからない。これはまあ極端な会社でしたけれども,そういうことをどこの企業もやってきたんですね。そして,課長が課長代理になっても課長手当が削られない,キッチリそのままの管理職手当がついています。つまり,ルールそのものが崩壊しているということなのです。
このようなことは,今後の経営環境,あるいは多様化する就労意識を考えていくと,やはり疑問を感じざるを得ないですね。ですから,職能資格制度は「発揮しなくてもいい能力」,要は行動責任はあるが,結果が出なくても別におとがめはない,というもので,こういった制度が今後も運用できるかというと,やはり結果が求められる時代になってきてますので,これは間違いなく認められないでしょう。
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