役割等級制度の現状と本質 [2/11]

1より続く

職務を明確にすることが必要

BG: この他に,職務等級制度の特徴や問題点としてどういったことが挙げられますか?

西村: 上位の管理職ポストにいるほど職務価値が当然高まります。また,昇進による昇進昇級幅が大きくなっていきます。昇進することが基本給の増大には最も有効であるという仕組みになっているのです。したがって,水平的移動によってキャリアの幅を広げる機会があっても,点数で表される職務評価の増大を伴わなければ,社員は喜んで異動を受け入れないことになります。知識,技能,これらが優秀であることがものをいう競争の激しい業界では,このことは大きな欠陥になる場合もあるでしょう。また,専門的能力の高い人も,管理職を目指してしまうことになり,人材の浪費が生ずることになっていきます。さらに,フラットな組織では,昇進の機会が乏しくなり,人々の不満が高まってしまう恐れも,職務給にあるといわれています。

職務評価システムを導入するということには,職務分析をし,膨大な時間とコストをかけて,一応職務記述書っていうところまで書き表していくわけですけれども,非常に時間とコストがかかってしまう。それでいて,環境の変化に応じて職務の内容が変わってくるわけですから,いちいち書き換えないといけないっていうことが生じてくるのです。したがって,これが面倒なために,現状維持的になってきて,組織変革が拒まれるということも言われてます。

これらのことは,本来,職務評価制度の責めに帰すべき事柄であり,運用上,しばしばこのような問題が生じてしまいますが,やはり権限責任を明確にするという基本に立てば,職務を明確にすることをしんどくてもやらないといけないことなんだと私は思っています。先ほど申し上げたように,「役割」というのは非常に曖昧です。職務よりは少し広い概念ということで職能資格制度以上に柔軟に対応することで責任の所在を曖昧にしてしまいます。これは日本の最も悪いところです。だから経営革新ができないんですね。上が変わらずして下が変わるわけがありません。責任の所在を曖昧にしたままなぜ経営改革ができるのですかということを,私は切実に感じています。

3に続く


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講師紹介

孫田 良平 氏

NPO法人 企業年金・賃金研究センター 名誉顧問

講師紹介

(株)メディン
 代表経営コンサルタント
  西村 聡 氏 

NPO法人 企業年金・賃金研究センター 上席講師

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